北陸周遊切符で富山の旅〜初日篇〜

ふと気がついたら四月が終わってました。何ということでしょう、とうとう一ヶ月更新無し。まぁそんなこともあるんだねぇということで。いや本当は駄目だけど。

さて。このところ古い旅行記をアップし続けていたのですが、ちょいと今回は三月のお話に。というのも、ゴールデンウィーク初日に一本の電話がありまして。その電話というのが富山旅行の際にいつもお世話になっていた「おら」のご主人の訃報。そこで順番は違っちゃいますが先に三月半ばの富山旅行記を書き記しておこうと思います。

もともと今年の三月には富山に行く予定になっておりました。そこへ二月の中頃、富山在住の方から「おら」が休業とお知らせをいただきまして。で、直接ご主人の携帯電話にかけてみました。「おお、ひさしぶり」とまぁある意味いつものご様子。いろいろとお話をしてみたところ、店は廃業したけど富山に来るなら案内するよとのお言葉をいただいたので予定を敢行致しました。

富山へ出発当日、昼飯どうしようかと近所の食事処で日替わり定食。ちょんとつけられてきたホタルイカにちょっと苦笑。うん、今から喰いに行きますから。何となくこの旅の後押しをされた気分で完食。そういえばこの日のためにホタルイカを食べてなかったなぁなどと特に意味もなく感傷に浸るのです。嘘です。単に食べる機会がなかっただけ。
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でまぁいつものように欲望という名のサンダーバードに乗り込んでいざ富山へ。当たり前のように酒を買い込んで車窓を眺めつつの3時間半の旅なのです。ちなみにロング缶だけでは当たり前のように足りませんから車内販売で更に買い足したことを付け足しておきます。足が重なっているのはホタルイカのように多足なのではなく、単なる蛇足なのです。

無事富山に到着。なのは良いのですが、肝心のおらの大将、というか面倒なのでシローさんとお呼びします。そのシローさんが一時退院の日を間違っていたのでこの日はお目にかかれず。いやまぁ何というかシローさんらしいですわ。その代わりに富山の有名料亭「かねぶん」に予約を入れて頂いてました。うーむ、一度昼間にシローさんに連れて行かれて以来の敷居の高さ。
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こんばんわー、お世話になります!とお店に入れば、以前「おら」のお手伝いをされていたカヨちゃんがお出迎え。お世話になります。ではどうぞどうぞと通されたのは旧館の二階、お座敷席。いや、そんないいんですか?というか他のお客様は?え?我々のために店を開けてくださったのですか?ということはこのでっかい店を御料人様とふたりで貸切。恐ろしい話です。
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兎にも角にもお料理頂くことにいたしましょう。まずは【八寸】から。正確には八寸じゃないのかな?実に丁寧なお料理。キンカンの甘露煮なんてのは、ちみっと食べただけで日本酒が欲しくなるという恐ろしさ。いや別に恐ろしくはないのですが。もずくは割と淡白な味付け。普段「おら」で豪快な料理が多かった富山だけにちょっとお尻の辺りがむずむず。
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【小蛸の煮付け】も見事に柔らかく実に旨いじゃあないですか。お訊きしたところ、こちらの板長さんはシローさんのお弟子さんだとか。なるほど、そういえば以前に連れてきて頂いたときにそれらしき会話がありました。残念ながら、その時は朝から呑み歩いてゆっくり出来ませんでしたけど。
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そして【造りの盛り合わせ】へと移行。もうこの辺りに来る頃にはすっかりと日本酒になってます。というかこの料理群で日本酒以外の選択肢がないのです。はっきり言えば最初のビールで乾杯も必要なかったかと思うほどに日本酒を欲しておりました。甘海老、ソイ、蛸、烏賊、ゲソ、梅貝の造りは実に上品。綺麗に造られているのです。うん、お酒お代わりお願いします。
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【焼き魚】はノドグロ。富山に来たらいつもシローさんが振る舞ってくれた魚です。というか、初めて富山に来たときに初めて入ったお店が「おら」。そしてそこではじめて食べたノドグロの旨さに感動したことをいつまでも覚えていてくれたのか、板長さんにノドグロを必ず用意するようにお願いして頂いていたそう。豪快で粗雑そうに見せかけてそういう気遣いが出来る男なのです、シローさんは。
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がしがしとノドグロ頂いているところで【鯛の子と鯛のしんじょ】が炊き合わせ。菜の花の苦みが鯛の甘味を引き立てるのです。まさに料亭の真骨頂。ふわりと香る出汁が日本で生まれ育った幸せを教えてくれると言っても過言ではない。そんな旨さ。
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ここで大物が登場。【ホタルイカの釜揚げ】なのです。一人鍋がセットされて、そこにやって来る生のホタルイカ。え?これを釜揚げっていうかシャブシャブしちゃうわけですか?するわけですよ。いいよいいよ、やっちゃうよ。煮えたぎる出汁の中へ…嘘です。煮えたぎってません。そんなコトしたら出汁が煮詰まりますがな。いい塩梅の熱さの出汁へホタルイカ。うは、一口で喰う幸せ。旨すぎますわ。

揚げ物は旬の【ふきのとうの天麩羅】と【レンコンの甘海老はさみ揚げ】。これまた日本酒泥棒と言いたくなる一品。ふきのとうのがほろ苦く、日本酒の甘味で流し込むと喉の奥から春の息吹。甘海老も富山ならではのはさみ揚げで。こちらもまた酒酒、酒もってこいと叫びたくなるほどの美味しさなのですわ。
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【ゼンマイポン酢ゼリー寄せ】は今どき流行りのジュレなのです。こう、完全に春の料理を堪能。こちらには【春キャベツの押し寿司】も一緒に。ほろ甘いキャベツと酢飯が絶妙じゃあありませんか。
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ラストは【鱒の寿司】で〆にかかります。押し寿司なのですが、樽で押しているのはなく箱寿司ですね。これまた口の中で絶妙にほろほろとほどけていく幸せ。いやいや、実に旨いです。こういう鱒の寿司というのも料亭ならではの美味しさですわ。
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そして最後は春の【デザート】。わらび餅といちご。実に綺麗に春を演出して頂きました。
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この日、貸切だったお陰でカヨちゃんからシローさんの事を色々と教えて頂けました。今回で三度目の入院なのに、わりと元気にしてらっしゃるなど。翌日一緒に遊ぶ約束してますから、シローさんにお会いできるのを楽しみにしてるんですよーなどと。

ということで御馳走様でした。富山は「おら」しか行くところ無いの?といわれる程に他の店に行ってませんでしたから、「かねぶん」の上品な料理も新鮮で美味しかったです。ではでは、明日という日を楽しみに今日はこの辺りで。

明日は狂乱の一日になること必至ですからね。
ということでおとなしくホテルへ帰ります。

今回のお店:
かる膳
兵庫県神戸市兵庫区本町1-1-6
TEL.(?078)777-7905

啐啄かねぶん
富山県富山市室町通り1丁目1-16
TEL.(?076)425-2337