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2011年5月27日 金曜日
食中毒事件について思うこと
すっかりと一ヶ月以上放置しておりました。東日本大震災で大きな被害が出て、しかも原子力発電所の事故、それによる畜産農家への甚大な損失など、あまりの事に少し成り行きを見てからアップと思っていたのですが、それ以上に酷い事件が起きてしまいました。いうまでもなくユッケによる食中毒事件です。当初、あまりにも情報が錯綜していたために何が何やら分からなかったのですが、ようやく全体像が見えてきたみたいです。というのも報道されているニュースや私が個人的にお付き合いのある方からお訊きした情報が概ね一致したからです。私が何となく想像していたことも大体あっていたみたいですが、やはりこれは「事故」というよりも「事件」ですね。
焼肉店で並んでいるメニューは大抵の場合以下の流れで入荷します。『食肉センター』→『食肉卸』→『焼肉店』という流れです。お店によっては精肉店が間に入ったり、輸入肉では商社などが入りますがまぁ大まかにはそんな感じです。今回の事件ではこのうちの食肉卸で病原性大腸菌が付着したのが第一の原因です。
こちらの卸の店がホルモンを扱っていたということ。肉の捌きの際に恐らく大腸菌が付着したようです。これは捜査で同じ遺伝子型のO111が卸の店から出ていることで間違いない模様です。そしてその肉を使った焼肉店がいわゆるトリミングなしでユッケを提供したことでさらに事態が悪化しています。トリミングとは表面のカットですね。
表面をカットすることで、本来なら付着している大腸菌を除去できるのですがそれが行われていなかった。理由として焼肉店は「国産牛 和牛経産モモ赤身100% ユッケ用のサンプルが出来ました。社員とサンプルテストしましたが、どの部位を食べても問題は無く感じました」というふれ込みだったからだというのです。
ここでも問題があります。歩留まり100%とは、ブロック肉全てが使えるということで、全てを生食用という訳ではないのです。通常、肉は筋や脂が付いた状態で納入されますが、その部分をカットしてあるというのが実際の所ですから、トリミングした部分は焼けば大丈夫という意味だったのかも知れませんし、全て生でも大丈夫という意味だったのかもしれません。それは卸業者と焼肉店のやりとりですから推測の域は出ませんが。
それにしても、ホルモンと精肉を一緒に行っていたらしいというところがまた大きな問題です。これは卸の方でも焼肉店の方でも同様だったようです。本来は十分に消毒したまな板と包丁をホルモンと精肉とは分けて使わなければなりません。それがキチンと分けられていなかったといわれています。この辺りも後々裁判などで明らかになると思われます。
さらに、このトリミングしていない肉をパッケージを開けてから二日後まで使用していたという事実もあります。まぁいうまでもなく、菌は繁殖してしまいます。もうここまでで十分に危険なわけです。というか現実死者を出すほどの酷い状況です。そして小さな子どもがこのユッケを口にしたということも忘れては行けないことだと思います。
普段、私などが利用している店では、「若齢者、高齢者のほか抵抗力の弱いひとへの販売を自粛」というところが多いです。これは私が行ったことのない所でもほとんどの店がそうだと思います。よくおまかせでお願いするときでも子供用と大人用はメニューを変えてくれます。今回のように毒性の強い病原性大腸菌では大人でも決して大丈夫とはいえませんが少なくとも小さなお子さんは肉に限らず魚でも生で食べることはやめた方がいいと思ってます。
昔から生姜や山葵などで生魚を食べていたのはそれなりの理由があるからです。それを受け付けないということはまだ体が出来上がっていないからだと思います。この辺り、肉と魚を混同するのは良くないのですが、現在生肉について法規制を検討中ということなのでちょっと思うところがありまして。このままでは話が脱線してしまうのでまた機会があればどこかで書きたいところです。
さて精肉の一番最初に肉を捌く食肉センターですが、実際にその全ての過程を見学したことがあります。少なくとも私が見た食肉センターでは、大腸の内容物が精肉部分に接することはないと断言しても良いかと思います。確実にホルモンと精肉は分けられていますし、それ同士が接することはまずありません。肉は骨を抜いてカットされたあとすぐに真空パックされますので。
今回の件に関していえばいくつかの事故が重なった上の事件だと思います。全くの主観で申し訳ないですが、最終的には卸の会社も焼肉店も立派な「犯人」です。食べた側に何の責任もないのかといえばそれも言い切れませんが、少なくとも肉を提供した側に問題があるのは間違いありません。この先の捜査や裁判で明らかになってくれることを祈っています。
報道などを色々と見ていると、「卸会社と焼肉店の間で見解の相違があったのが原因」といえなくもないですが、プロとして、食を預かるものとして見解の相違で片付けられるものではないでしょう。実際の話、過去にユッケで亡くなった方のニュースなど聞いた覚えがありません。どこの店でもそうならないための最善の努力はしてきたはずですから。なのにこの卸会社と焼肉店ではこれだけの事件が起きたのですから。
BSE騒動については企業側(畜産、食肉関連業者、小売店、飲食店)に罪はないと思っていました。むしろ被害者であるとさえ考えます。しかし、今回に関してははっきりとこの卸会社・焼肉店が悪いです。そして事後の会見などを見ても、もうどうしようもないとしか思えません。業界全体・お客さんに対するひどい裏切り行為です。それまでの他のお店の積み重ねを根底から崩しているのですから。
まだまだ書き足りな事が一杯ですが、あくまでも実際に報道されていることを元にした主観です。もしも間違っていることや他にご存じのことがあればtetsuya@pulgogi.netまでメールで教えて頂きたいのです。最早テレビ・新聞などのメディアだけでは分からないことが多すぎます。是非よろしくお願いいたします。
さて、そんな訳で次回の更新からは通常バージョン、呑んで喰ってのひとり言へと戻します。脳天気に何やってやがると思われるかも知れませんが、地震での自粛に加え食中毒事件でまさに疲弊している焼肉店に今までの恩返しをしたいと思います。不謹慎な日記になってしまってもどうかご容赦ください。
2011年5月27日 16:03
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