先日、突然思い立って岡山まで行ってきました。ま、思い立ったのは主に御料人様ですが。前年度までの非常に多忙だった御料人様に少々時間的余裕が出来たからという理由で。でまぁ、いつものように欲望という名の山陽新幹線に飛び乗ったという訳なのです。

さて、岡山駅に辿り着いたところで御料人様はマッサージに、私は街へと放流に。忙しく働いている御料人様とは違って普段からアッパッパーな生活態度の私にマッサージなど必要ない。肩こる暇も無いほど脳天気暮らしですから。で、せっかくなので岡山路地探訪に出て参りました。ま、早い話がロケハンに行こうというわけですわこれ。で、ぶらぶら。

桜の季節が割と長かったのか、公園や川の畔では未だに桜の花。そして花より団子な私は岡山駅東側、桃太郎大通付近を中心に念入りに歩き回るのです。ええ、いつものように観光客はおろか地元の人でも行かないくらいみっちりと路地を。以前、一人で来たときには気がつかなかったのですが、駅近くには意外と定食＆ちょっと呑みの良さげな店ありますね。

それなりに目星をつけて、立ち呑みで独りホルモン串で引っ掛けてから待ち合わせの時間なので御料人様と合流。そのまま呑みに行ってもよかったのですが、せっかくなので岡山城まで足を伸ばしてみました。というか、時間が早くて店が開いてなかったりしたのですが。早々に城見物を終えて、さてではどうしましょうか。今回は特に行きたい店も決めてないのです。

で、前乗りした私の出番。気になっていた店にご案内...と思ったら、近くを通っただけで御料人様がすたすたと。ええ、私が一番気になっていた店へと進んでいくのです。ふむ、つまり二人の意見が一致したと。ではココにしましょう、と決まったのが「おかやまの酒ばあ さかばやし」なのです。もうね、何が気に入ったって酒販店が経営する呑み処なのです。

さて、見事に開店と同時の一番客。早速お酒をいただきましょう。お店の方にお訊きしたところ、何とこの店、扱っているのは全て岡山の地酒。その数百八十種類以上だとか。ふえぇー、それはそれは。目の前にどーんと存在感ある冷蔵庫には確かに色んな種類の酒がありますわ。この日はしとしとと小雨が降っていたのですっかりと冷え込んでますから燗酒をお願いしました。

「今日は調理場が立て込んでますので少し時間がかかりますが大丈夫でしょうか？」とは店員さんの弁。実はこのお店、呑み処が二つ併設なのです。我々が入ったのはカウンターとテーブルで20人ほどのお店。もう一つは大箱の居酒屋風。で、大箱の方が新歓宴会が入っているのでバタバタしているとか。あ、いいですよ、新幹線の最終までに間に合えば。

つきだしの【クラゲと黄ニラの和え物】をいただきつつ、燗酒に時間がかかるならとホッピーをいただきました。ほほう、このお店、中と外も注文できるんですね。良いじゃないですか。ちょっと乾いた喉をホッピーで潤して和え物。クラゲの食感が何とも美味しい。上品な味付けも良いですねぇ。とやっている間に燗酒がやって来ました。

燗酒が送れた理由は忙しすぎて沸騰させてしまったからという可愛らしい理由なのですが「遅くなったので二合にしておきました」とありがたいサービス。ありがとう、このご恩は一生忘れません。で乾杯。やや酸の感じられる人肌より少し高めの燗。よく見たら吟醸酒。へぇこういうのも良いじゃないですか。そこにやって来たのは【黄ニラの細巻き】。

岡山といえば黄ニラと御料人様。おひたしと細巻きがあったのですが、空腹に酒は危険ということでまずは米を、で細巻き。これが旨い。ニラの細巻きというと力不足な感じがしますが、しっかりとした黄ニラは山葵との相性も良いのです。うん、旨い！さらにやって来る【下津井産タイラギ貝の造り】が絶品。もう、喰えば分かる。甘く舌の上で上品な旨味。

こりゃあ日本酒だねぇ、当然だねぇ。そして岡山といえばこれも忘れちゃいけない【シャコの造り】を。以前の寒河で食べた生とはいきませんが、それでも身は厚く旨味しっかり。ああ、こりゃココまで来て食べるのが正解だわ。【タコブツ】も岡山の蛸。店員さん曰く「岡山のたこはデカイのです」だとか。確かに明石の蛸とは比べるまでもなくデカイ。

そのぶんやや大味な感は否めませんが、これは料理した方が旨いんじゃない？よしあとで天麩羅も食べよう。造りはまだ続きます。【鰆の刺身】はさすがの岡山名産。タタキと刺身があったのですが、お店から刺身を強く推されたのでそちら。これがまた筆舌に尽くしがたい。実に崩れやすい柔らかい身が舌の上でほろりととろけるかのような。何この快感。

傷みやすい魚なので地元でしか刺身はお目にかかれないサワラ。ああ、この幸せを神戸に持ち帰りたい。そしてそして【マグロの酒盗】は山の芋いり。ああ、さすが。日本酒に合う肴がよく分かっているプロですわ。生臭さが全くない酒盗がまさに酒を盗んで去って行く（胃袋の中へ）。よし、次の酒。ずっと気になっていた"燦然"をいただきましょう。

あえて本醸造の旨い酒をお願いしたらこれだったのです。偶然なのか我が魂が欲していたのか何にしてもグイッと一献。普段呑んでいるのは灘の酒。実に骨太な日本酒なのですが、こちらの燦然はかなり趣が違います。何というか隣にいる気の良い兄ちゃんという感じ。存在感はそれほど無いけど気さくにどんどん呑んでしまう感じ。うーん、日本酒ってのは面白いもんだ。

さて、細巻きも食べたけど、せっかくなのでおひたしもいただきましょう【黄ニラのおひたし】。これはしっかりと黄ニラの味が分かります。そして【蛸の天ぷら】は当然頂きます。うん、予想通り。天ぷらにした方が絶対に旨い。大ぶりな蛸は油や衣によく合ってます。これは実に幸せだ。さらに【ニンニクの丸揚げ】で元気つけましょう、御料人様。

いやーイイ感じになってきました。本当は軽く食べてさっさと帰りましょうという予定だったのですが、尻に根が生えてしまいました。次は冷やで酒下さい。「ちょっと変わった呑み方どうですか？」と、おりがらみの酒二種類。しかも上澄みとよく混ぜたものを分けて。ほほう、良いですねぇ。しかも違う種類の酒米なのだとか。こういう呑み比べも実に楽しい。

で、こういう酒には【焼ままかり】ってのがいい塩梅です。岡山名物のままかりを炙っているのですが、濁り酒との相性が良いです。熱燗でも当然旨いと思いますが、肴を選ぶおり酒には実にマッチしていました。最後に燗酒をいただきつつ御飯もので〆ましょう。ネーミングに負けました。【アボガドドラゴンロール】いただきます。ね、喰うでしょ？しかも見た目が実に縁起が良さそう。

そして旨い。なにこれ、ふざけた見た目と違ってマジで旨い。アボカドとサーモンの相性が良いのでしょうか、余りの旨さに瞬殺。いや、これはいいわ。また次回来るときにはこれ喰おう。ってもう既に次回の訪店決定ですわ。どうも御馳走様でした。満腹満足満面の笑みってヤツです。うーん、良い店見つけたぜ！っていう喜びまでお土産なのです。

最近、旅行に行くときには前もって店を調べたり予約することが多かったのですが、こういう行き当たりばったりで出会い頭の事故みたいな嬉しいご縁があると本当に幸せです。そして無駄に歩き回る路地探索は大切なリサーチだと実感します。この調子でどんどんと新しい店を見つけねば！

その前に焼肉をもっと喰う方が先決な気もしますが。
ま、そちらは焼肉王子にお願いしましょうか。

2012年4月19日 13:26